様々な彫刻

 木魚は、その表面に様々な彫刻が施されます。
 基本的な意匠は龍ですが、その他にも鯱(想像上の動物)や珍しいところでは蛇を図案化した彫刻もあります。
 木魚のルーツは、今でもお寺などにある魚桿のようなシンプルなものだったと言われています。眠らない魚にことかけて、そのくらい熱心に修行せよという戒めにしたという意匠が、一体どのような経緯を経て龍や鯱に変わっていったのか、実のところ私共にもよくわかりません。

 以下に、主な木魚の彫刻を挙げてみました。実際には、大きさと彫刻の組み合わせから、数多くのパターンがあるのですが、ここでは詳細は割愛させていただき、大まかな特徴だけをとりあげています。

 

 

 

 

名古屋彫(小) 二頭の龍が、左右から一つの玉を咬み合っているデザインです。この彫刻は、別名「並彫」とも呼ばれ、ちょうど一刀彫のように龍を簡略化した意匠となっています。
名古屋彫(大) 直線的でシンプルな前述の彫りに、複雑な曲線を加えたり、渦紋を刻むなどして、より高級感を高めています。大きめの木魚だけでなく、小さなものに施して、いわゆる「高級仕様」とすることもあります。
龍彫(たつぼり) 意匠としては名古屋彫と同じですが、この彫りでは全く簡略化はしていません。空想上の動物としてのダイナミックな造形と複雑な装飾を刻む作業は、木魚職人の腕の見せ所です。使用する木地も、色合いのよい最高のものを用います。
鯱彫 城の天守閣にのっている「しゃちほこ」を、彷彿とさせる意匠です。その名の通り、伝説上の動物「鯱」を、一匹丸ごと木魚に彫り込んでいます。(この木魚は、素材に桑の木を使用しています)
蛇彫 写真の木魚は、実は古いもののレプリカで、現在製品としては作っていません。蛇彫りという名前からして、蛇をデザインしているようなのですが、斬新な意匠は今見るとかえって新鮮です。この彫りに関しては、来歴についても不明な点が多く、いわば謎の木魚です。

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