職人の道具

 木魚を作るといっても、特殊な道具を使うわけではありません。そのほとんどは、大工や仏師が使う刃物と何ら変わりません。そこには、汎用品の道具を、自分たちの仕事にうまく取り入れてきた、先人の知恵が垣間見えるような気がします。ただし一つ、「中彫りノミ」だけは、木魚作り専用の道具と言えるでしょう。
 ここでは、主な道具12種を挙げてみました。

 

 

 

 

 

切り出し小刀 片刃の小刀です。市販品ですが、鋼の堅さや粘りがみな微妙に違い、なかなか使いやすいものに巡り会えません。刃先をよく使うので、なるべく薄く鋭くなるように研ぎ付けます。
平ノミ各種 刃幅の大きなものは、主に木魚の形を整えるのに使います。小さいものは、仕上げの彫刻をするのに用います。
丸ノミ各種 木魚の取っ手の形を作るほか、仕上げの彫刻で、渦紋などを刻むのに用います。
カンナ各種 木魚の表面を滑らかな曲面にするのに使います。手首のスナップでアールが付けやすいよう、カンナの台は短く切り詰めてあります。
鋤きノミ 金槌を使わず、手の力だけで押して使います。カンナの入らないところを滑らかに削ったり、彫刻で龍の角を刻むのに使ったりします。
三角ノミ 彫刻刀としておなじみのノミです。龍のたてがみや、渦紋の縁取りなど、線条を刻むのに用います。
中彫りノミ 長い柄の先に丸ノミ状の刃が付いていて、木魚の中がくりぬけるようになっています。木魚の大きさや用途によって使い分けるため、何十本ものノミがあります。
金槌 金属部分が鼓状になって、打面の広いものが望ましいのですが、作るのに手間がかかるせいか、最近店頭では見かけなくなりました。とにかく長持ちする道具で、柄の部分だけ付け替えれば、世代を越えて使い続けられます。
木挽き鋸 昔から、木こりや木地師が使っていた、巨大な鋸です。大きな木魚に、切り込みを入れるのに使います。
電動チェーンソー 用途に応じて、刃渡りの違うものを使い分けます。最大のものは、刃渡り90p、重さは20sを越えるほどです。実用本位の頑丈な作りで、現在使っているものは、30年近く現役で稼働しています。
電動カンナ 木魚の寸法の調整、および大きな木魚の整形に使います。
差し金 木魚の寸法を測ったり、直角を出したりするのに使います。尺貫法の目盛りが刻まれており、木魚の寸法は、「尺」と「寸」で測ります。

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